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佐藤英輔のライヴ三昧 Diary noteから引っ越し中


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映画『ビートルズがいた夏』。『W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代』展。アイザイア・コリアー  2026年4月2日(木)

渋谷・映画美学校試写室で、2023年フランス/ルーマニア映画『ビートルズがいた夏』(原題:TWST: Things We Said Today)を見る。7月初旬から公開となる。


 おお。「シングス・ウィ・セッド・トゥデイ」はザ・ビートルズの懐古的な内容の歌詞を持つ1964年曲の表題でもあるのだが、“ツイスト”とその前に付けているのが要点。ザ・ビートルズは1965815日にNYクイーンズ地区にあったシェイ・スタジアム(19642008)で公演〜55000人を集めたそれは、音楽家初のスタジアム・コンサートとなるよう〜を行い、それはロック世代/文化の到来を強く印象付けたわけだが、この映画はその歴史的コンサートを題材に置く。


 当面はモノクロ主体。アタマのほう、4人が空港におり立つ記録映像。ホテルでの合同インタヴューの模様も続いて入れられるが、くだらない質問ばかりで昔のプレスはどうしようもねえなと思わせ、入れる必要はあったのか。ホテルから顔を出すメンバーのシーンもほんの少し出てくるが、以降は映画はザ・ビートルズ自体からは離れる。彼らに熱狂する少女たちの模様や当時のNYの街並みなどから、同時期(8月1117日)にLAのワッツ地区で起こった歴史的ブラック・ライヴズ・マター的暴動(それがなければ、72年のスタックス社の大コンサート“ワッツタックス”もなかった)や、やはりそのころから翌年にかけてシェイ・スタジアムの近くで開かれていたニューヨーク万博の模様を交錯させたりもし……。ブリティッシュ・インヴェイジョンの際たる存在を引き金に同時期の米国の希望や絶望とつながる事象を重ね、また一方では当時のザ・ビートルズに憧れる少年や少女の心情を意図を凝らしインサートもする。さらに、当時の風景にヤン・ケビというフランス人の人間のイラストを新たに入れたりもし、それが二重、三重の視点をくわえていると指摘できなくもない。


そんな重層的なドキュメンタリーを作ったのは、1951年生まれでドイツで活動しているようなアンドレイ・ウジカ。彼は公式映像から個人の8ミリ映像までを集め、それをあれれな形で大胆に編集。完成にウジカは10年以上の歳月を費やしたとか。60年もたった今だからこその、独自な編集を介する妄想的でもある社会的総括を彼は行なっている。終盤の市井のカラー映像と後から入れたろうコドモの会話が重なる部分はある種、狂気じみている。ソ連の宇宙ステーション「ミール」に滞在した宇宙飛行士(91年のことで、その際にソ連は崩壊した)を描いた映画や、ルーマニアの独裁者であるチャウシェスクの自伝映画などをウジカは作っているようだが、はたしてそれらはどんな飛躍を持つ描き方をしているのか。気にならないはずがない。


当然、ザ・ビートルズの音楽は使われない。始まりはラジオDJのかける「ロール・オーヴァー・ヴェイトーヴェン」(チャック・ベリーのオリジナルではなかったか)で、エンドロールではもろにジェイムズ・ブラウン調のソウル・ジャズ的曲が流される。そのインスト曲はかなり格好よく、なぜか映画の“ひねくれ”傾向を高める。とうぜん、最後には楽曲も紹介されるが、文字が小さくて読めなかった。


もう一度、見ると印象は変わるか。ザ・ビートルズの姿を見たい。という人には失望を与えるだろう。面白いかと言えば、娯楽的であるとは言えない。だが、興味深すぎる。なるほど、『TWST: Things We Said Today』であった。


次は恵比寿・東京都写真美術館で、『W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代』という展示を見る。日本とも関連が深い写真家のユージン・スミスに対するぼくの知識は、彼を描いた映画『ジャズ・ロフト』(20210703日)に尽きる。この秀でた報道カメラマンは自分が住むNYのロフトをジャズ・アーティストに解放していた人物でもあったわけで、今回の表題から彼が撮ったジャズ・マンの写真、ジャズが生まれる現場を切り取った写真に触れることを期待していったのだが、やや期待外れだった。だって、ロフトの写真は一部で、移動を厭わなかった彼の戦争時の硫黄島やサイパン、ピッツバーグ、シュバイツアー博士が住んだガボン、ハイチ、日立、水俣などの写真も並べられているから。


もちろん、音楽家を撮った写真も紹介されているが、それらは<ジャズとフォークのミュージシャンたち>という題で括られる。唯一、セロニアス・モンクと若き日のボブ・ディランは名前が紹介されているが、ローランド・カークやマイルス・デイヴィスら多くはその他扱い。スミスが愛聴していたアルバムのリストも紹介されていたが、彼はジミ・ヘンドリックスやボブ・ディランも聞いていたんだな。この展での説明表記で、スミスが住んだロフトにジャズの担い手が出入りしていたのは、その前にモンク他のアレンジャーだったホール・オヴァートンが同所に居を構えていたからだったのを知る。


+映画『ジャズ・ロフト』

https://eisukesato.exblog.jp/33457134/


最後は、丸の内・コットンクラブでテナー・サックス奏者のアイザイア・コリアーを見る。1ホーンのカルテットによるもので、セカンド・ショウ。ピアノのデイヴィス・ウィットフィールド、ダブル・ベースのコンウェイ・キャンベルJr.、ドラムのティモシー・レジスを擁する。コリアーは1998年生まれのようだが、みんな若く見える。


おお今日日にコレかと思わせる、ジョン・コルトレーンの名も出したくなるような正攻法の表現を聞かせた。20分はある曲を3つと15分ほどの曲を一つ。その長めの尺に必然性があると思わせる内容だった。うち一つはアメリカ国家の独奏ではじめ、終盤はブルースとなる曲。面白いのはサックスを吹かない際にコリアーは鳴り物をけっこう手にする。ピアノ・ソロの際はちょいうるさいと思ってしまうときもあったが、その全体像から違和感は感じさせない。ベースは太く堅実に刻むなか、全部レギュラー・グリップで叩くドラマーはかなり叩き込む。キックの音が大きく、2バス(ドラム)かと思わせるところもあり。はは。コリアーは彼とデュオで演奏した箇所もあった。


意気軒昂。ハードに、スピリチュアルに。アフリカン・アメリカンとしての表現であることに、強く留意しているとも思わせるそれには真実があった。一方で彼は女性シンガーや電気ピアノを採用する、ソウルぽかったりアフリカぽかったりする方向に出るアルバムを出してもいる。


<今日の、顛末>

 実はコットンクラブ公演は試写を見た後に向かい、ファースト・ショウを見る予定だった。だが、コリアーがシカゴから乗った旅客機がバード・ストライクでアンカレッジに緊急着陸してしまい、そのため東京着が当日になってしまった。別便に乗った他の奏者たちはすでに着いていたようが、それゆえファースト・ショウはキャンセルになってしまい、到着が遅れた彼の初日の公演はセカンド・ショウだけになってしまった。だが、無責任な言い方になるが、そういうアクシデントがあったほうが往々にしていい実演になったりはするよな。そんなわけで、間にユージン・スミスの写真展を見にいった。18時閉館のところ、木/金は20時までやっており、世のなかうまく回るものだ、


by eisukesato | 2026-04-02 15:30 | 音楽 | Comments(0)