The Vernon Spring Japan Tour 2025 with 中村佳穂 2025年9月30日(火)

桜木町・神奈川県立音楽堂。お、ステージ上にはピアノが３台も置いてある。それだけでも、ちょっと嬉しくなる？

まず、中村佳穂（2025年９月18日）が出てきてピアノを弾きながら歌う。打ち込み的サウンドがついたアルバム群の方がぼくは好きだが、気ままにピアノを弾きながらその場の気持ちを綴っていく様も興味深い。その後は梅井美咲（2021年9月26日、2022年7月27日、2022年11月27日、2023年8月9日、2024年1月25日、2024年7月18日、2025年5月16日）と渡辺翔太 （2024年2月26日、2024年7月23日、2024年 10月1日、2025年7月31日、2025年９月18日) 、2人のピアニストがさらに出てきて、彼女に流動的なサポート音をくわえる。どちらかだけが、絡む場合もあった。

休憩が入った後に、ザ・ヴァーノン・スプリングのパフォーマンスが始まるのかと思えば、50分3人が演奏すると彼が出てきて、そのまま1曲一緒に演奏。決して両者の音楽性が合致しているとは思わないが、すうっと香り立つ感じを無理なく重ね合う。

そして、その後は英国ブライトンに住むサム・ベステの個人プロジェクトであるザ・ヴァーノン・スプリングが中央に置かれた（特殊ぎみの？）ピアノを淡々と弾き出す。記憶の底にあるような甘美なフレイズとときに歪んでもいる響きが一体となる、密やかな現代アンビエント・ピアノ演奏創出者なんて言いたくなる彼の表現は録音プロダクツでこそ真価を出すとも思えるが、実演ではその妙味をもうひとつ開かれたかたちで効果的に出していた。

基本はミュートしたようなピアノ音に音響をかけた演奏が送り出され、現代的な少しの装飾音やアクセント音などもときにくわえられる。味あるヴォーカルが入る曲も確か２つ。とにかく、もう一つの得難い情緒や“場”の調整音が十全に提供される。そんなパフォーマンスに触れ、彼は秀でたメロディ・メイカーであること、さらにはなにげに指捌きがブリリアントであることも了解した。ジャズの心得もあるか。本当にいい人そうであることも出していた彼だが、最後はまた日本勢と重なった。

　この横浜公演は日本ツアーの初日。以降、10月7日にかけてThe Vernon Spring はあと５箇所の公演をする。

▶️中村佳穂

https://eisukesato.exblog.jp/34841943/

▶︎過去の、梅井美咲

https://43142.diarynote.jp/202109271035415011/

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▶︎過去の、渡辺翔太
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＜今日の、場＞

1954年にできたという約1000人規模の公立のホールだが、あのころの得難いモダニズムの香りあり。横浜らしい、とも言える？　ゆったり／余裕ありと書きたくなるところもあり（会場正面の広い駐車場は来場者に開放しているのだろうか）、メンテナンスをしつつ、維持されてほしいな。当然音響にも気を配っているはずで、拍手の音もでっかく聞こえる。中村も、マイクを使わなくても声が通るというような発言をしていた。最寄駅は桜木町。東横線の終着駅……。だったころが、懐かしい。